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九州1周、海沿いの旅日誌
明日からゴールデンウィーク。突然、九州の海沿いを1周して見たくなった。「よし、今から決行だ!」
またもや1分程の旅支度で、いざ、地元(大分県)から南へ、ポンコツ軽自動車で飛び出すのであった。

晩飯を食べ終わっていきなり南下開始! 〜大分から宮崎へ〜


明日から大型連休。当然、旅なのだ!
今回は地元、九州をひたすら海沿いにぐるっと1周してみようと愛車、平成2年ミラ号で出陣。
なんか、今回の1周旅行でミラ号の走行メーターも1周しそうである。

旅とはいえ、地元は大分県。および周辺の県境は、もはや旅とは言えないために宮崎県の後半から旅を開始すべく、夜9時に大分県から脱出することにした。

今回のテーマは海沿いに九州を1周。しかし、「見慣れた土地を海沿いに、しかも、夜の真っ暗闇に走ってなにが楽しい!」ということで宮崎県宮崎市あたりまで国道10号線で南下。スタート早々に海沿いの道を使わずにルール違反するのであった。

途中、道の駅を各駅停車しつつ、3時間かけて宮崎市へ到着。
宮崎といえば 『シーガイヤ』 と呼ばれる巨大リゾート施設も今回は素通りなのである。今回の旅の目的も近代施設ではなく本物の自然を満喫するのである。
自然育ちの田舎者がさらに自然を求める究極の旅なのだ !?

旅は早寝早起きが鉄則。そろそろ寝ようと思うがここは宮崎市街地。町の真ん中で寝るわけにもいかない。
そして、さっきまで温泉地があちこちにあったのに、なぜかスーバー銭湯に入ってしまうのであった。
「よかった! とりあえず温泉だ!」

すでに夜の1時を回っている。寝場所を求めて再び南下。
途中、若者が腕を伸ばしてヒッチハイクをしている。
「お前とミラ号で寝るわけにはいかん!」

と、ひたすら無視してパーキングに車を止めて車内で1泊目を向かえるのであった。

溶岩の海 〜宮崎県 日南市〜


朝6時にすがすがしく起床。前回の中国地方1周の初夜は一睡もできなかったが、旅慣れてきたものだ。

朝6時というのにココのパーキングがにぎやかになっている。
外の景色をみれば日向灘(ひゅうがなだ)の海が一面に広がっている。

「おお!」

なんでもないパーキングかと思って寝ていた場所は 『青島』 展望台の駐車場であり、そこで、ものすごい姿勢の寝相を一般公開していたのであった。
初日から「旅の恥は掻き捨て」である。

日南市の海岸は溶岩で成り立っていて、『鬼の洗濯板』 と呼ばれる溶岩がまさに巨大な洗濯板のようにみえる海岸が広がっている。
さっそく、『鬼の洗濯板』 を歩いてみる。

「うーん、歩きにくい …」

とにかく、自然のパワーと自然の不思議を感じさせる場所である。

溶岩の海 その2 〜宮崎県 日南市〜


『いるか岬』 というイルカが泳ぐ風景を一望できる岬を発見。
さっそく、イルカ君を探して海を見渡す。

「・・・・。そんなものいねぇ。」

それよりも気になるのが崖下の海岸である。
溶岩なのであろうが、なにか異常であり、幾何学 !? なのである。

釣り人がいるのでどこか降りる場所があるに違いない。
なんとか降りてみると、そこにSFの世界が広がった。

「なんじゃこりゃ!」

溶岩といえばそれまでだが、鍾乳洞の鍾乳石の世界のような、極太のサボテンがあちこちに生えているような、どこかの荒れ果てた星に舞い降りた気分になる異世界である。

「おっちゃん、火星人でも釣れますかぁ?」

西部の荒野 〜宮崎県 日南市〜


海岸で溶岩のサボテンを見たと思えば、山側も本物のサボテンで埋め尽くされている。
『サボテンハーブ園』 である。
開園は9時からであり、まだ1時間も時間がある。
トイレには入れるので、そこで歯磨きでもすることにした。
「うーん、何か忘れている・・・。」

「おお!朝飯を食っていねぇ!」

再び9時にやって来る。
「しまった! 一番乗りを越されてしまった!」

入場はしたものの、サボテンは山の頂上まで続いている。
「まさか、あんなところまで歩くのであろうか・・・」

と思ったのも束の間で、スロープコンベアというゴム式のエスカレータのようなものがあった。

ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・ブィン・ブィン・ブィン・・
「・・・・・。」

サボテンを見下ろしているので味気ない。どうせならサボテン群に囲まれて歩きたいものだ。
途中からスロープカーというモノレールのようなものがあったが、歩いていくことにした。

西部劇に出てくる「山」の形をしたサボテンは少なく、草履(ぞうり)がいくつも繋ぎあわされたような仙人掌(サボテン)が生えている。
このサボテンには「とげ」はほとんどなく、「ぴちぴちぱんぱん」とみずみずしく、「ポキッ」と折って、「かぷっ」と噛めば、「しょりしょり」と食べられそうな、食欲をそそるサボテンである。
園内のレストランを横切ろうとすると、なんと、「サボテンステーキ」なるメニュー発見。

「・・・・。」

「いや・・、やめておこう・・。」

とにかく壮大なサボテン園である。パンフレットによると130万本ほど生えているらしい。

イースター島へ漂着 〜宮崎県 日南市〜


『サボテンハーブ園』 の入園券は、『サンメッセ日南』 にも入園できる共通券となっていた。
なんでもモアイ像があるらしい。
すぐ近くにあるようなので行ってみることにした。

入園して駐車場へ。駐車場には県外ナンバーの車で埋め尽くされている。

「おお、そんなに有名なところだったのか」

園内をさまよい、高さ6mはあるモアイ像7体を発見。

「おぉ〜!」
「・・・・。」

「ほ〜。」
「・・・・。」

「へぇ〜。」
「・・・・。」

なかなかのモアイであった。

国道を歩く車両 〜宮崎県 日南市〜


いままで、たびたび耳にしていたのが「宮崎県や鹿児島県の人たちはのんびりとしている。」という会話だ。
確かに話のとおりに地元の車は法廷速度を守り、時速1kmともオーバーしない。時速30kmの標識があれば、きちんと時速30kmで走っている。
「本当の話だったんだ。」

景色を楽しむ旅なので、非常にありがたい !?
しかし、町に入って景色が無ければ、少しじれったい。
「時速40kmの標識なのに時速20kmも出てないよ〜」

と前方をみると、先頭にリアカーを押したおばちゃんが走っている。いや、歩いている。
追い越し禁止の車線でもないのに誰一人として追い越そうとしない。
リアカーは延々と国道を直進する。
「ぬぉ〜! リアカーも立派な車両なんですね〜」

すっかり、このすばらしい交通マナーに溶け込んでしまっているのであった。
そして、県外ナンバーの車がたびたび対向車線にはみ出ては追い越していく光景をみて「ムカッ」としてくるのであった。
私の安住の地とは日南市なのかもしれない。

珊瑚鑑賞、悲痛の断念 〜宮崎県 南郷町〜


南国と言えば熱帯魚が生息するサンゴ礁の海。
『日南海中公園』 をぐるりと1周してくれる 『マリンビューワーなんごう』 は半潜水式の水中観光船だ。

ココに来て、こいつで珊瑚を拝まないわけが無い。
さっそく、チケット売り場へ直行。

「あらら、いま出航したばかりだから次は1時間後だよ。」
「あた〜、仕方ない待ちます。」

「でも、今日は海が濁ってるから何も見えないよ。」
「えっ !?」

「熱帯魚が1匹泳いでるのがなんとか見えたって・・」
「あの、キャンセルできますか・・」

「うん。そのほうがエ〜。」
「うぇ〜ん。」

大隈半島は横断です 〜鹿児島県 内之浦町〜


宮崎県串間市を走っていたかと思うと観覧車が見えてきた。そこは志布志(しぶし)町 『ダグリ岬』 の遊園地。つまり、鹿児島県に突入したわけだ。

さらに南下。のどかな内之浦(うちのうら)町を延々と下る。
しかし、あなどってはいけない。
内之浦町は 『宇宙空間観測所』 があり、ロケットのコントロールセンター、レーダセンターなど、超ハイテク装備な町なのである。

このまま、南下を続けると本土最南端である 『佐多岬』 に到着してしまう。
実はそこで 「日の出」 でも拝もうというたくらみがあるのだ。
しかし、まだ昼の1時である。このままでは到着が早すぎるのだ。

そして海沿いの道も国道448号から怪しげな県道74号へ変更となりそうだ。地図には、この県道は「通行不能多し注意」と書かれてある。そしてポンカン畑が1箇所しるしされているだけで観光名所など何も記入がされていない。
さらに地図を眺めていると道が途切れて無くなっている。
ガソリンも少なくなってきたのでこの県道に入るのは危険な香りが強すぎる。
とにかく地図上では、道と山だけなのである。

超ハイテクな町 『内之浦町』 。

「このあたりには必ず宇宙人との共同研究秘密基地が隠されているに違いない。」

よって、そのまま国道448号で大隈半島を横断することにしましたとさ。

桜島一周 〜鹿児島県 鹿児島市・桜島町 『桜島』〜


国道448号を横断すると大根占(おおねじめ)町へ到着する。
「上るか下るか・・・」

午後2時。まだまだ1日は長い。
予定を変更して、『佐多岬』 より先に 『桜島』 を観光することにした。

国道220号を北上して、『桜島』 を時計回りに一周開始。
国道224号に入るとすぐに 『有村溶岩展望所』 なるところが観光客でにぎやかになっている。
確かにあたり一面は溶岩だらけだ。
しかし、岩がゴロゴロと積み重なっているだけで宮崎のような異質な溶岩の世界ではない。

テクテクと歩いていると活火山 『桜島・南岳』 が姿を現した!
「噴煙が・・ない。」

「本日は非常におとなしいようだ。」

『桜島フェリー』 が到着したばかりの桜島港周辺は完全に1つの観光都市になっている。
「あなたたち、こんなところに住んでいたら危ないですよ」 と、率直に思う。
大きな、お世話である。

桜島港を境に道も国道224号から県道26号へと変わり、ひたすら海沿いを走る。
無数に 『桜島・御岳』 へ向かっている道がある。

「どうしても登れというのだな・・」

車は海から離れ、山頂を目指す。
とにかく、上るには上ったが道はゲートで閉ざされている。

「ひぇ〜、ココまで来て行き止まりかヨ!」

地図を見ても山頂に届く道なんてありはしない。
見上げれば、現在地は山の麓(ふもと)にしか過ぎなかった。

少し下山して 『湯之平展望台』 へ向かうことにした。
途中、同じ山頂を目指す県外ナンバーの車と数台すれ違う。
「ふふふ、君達もまだまだ蒼(あお)いな。」

『湯之平展望台』 にて、『御岳』 『中岳』 を眺める。
「ああ、実におとなしい山だ。」

相変わらず、噴煙をみせてくれない。
実にケチな山である。
「しょぼん。」

鳥居埋没池? 〜鹿児島県 鹿児島市 『鳥居埋没地』〜


桜島1周も後半である。
ちょっとした町に入ったかと思うと、道路が路上駐車でにぎやかになっている。
「なにか大安売りでもしてるのかな?」

こちらも買う気満々で窓から顔を出して覗き込むと、そこは神社のようだ。

「なるほど!」

桜島1周を始めてからずっと気になっていたことがある。
道路標識といっしょに観光案内板で 『湯之平展望台はあっち』、『桜島フェリーもあっち』 に続いて 『鳥居埋没地はこっち』 という看板が随所に書かれてあったのだ。

それも、ずっと、『鳥居埋没』 と読み間違えていたために、
「昔から語り継がれている、いわくありの池でもあるんだな。」 と軽視していたのであった。

とにかく、路上駐車の先端に車を止めて、「俺にも見せてくれ〜」 と神社へ小走りに走る。なぜなら、大走りは疲れるからである。

神社の入り口に立つと鳥居が見える。
もう、語る必要はないであろう、鳥居が地面に埋もれているのである。
そこに見えるのは鳥居の「先っちょ」であり、くぐることもできない。

なんでも、大正3年の大噴火でこんな姿になったようで、その噴火が起こるまでは桜島は完全な島だったというから噴火の脅威がこの鳥居を見れば伝わってくる。

もっと脅威なのが、そこにいまだ住み続けて町を維持している住民の偉大さである。住民に敬礼である。
そして鳥居に敬礼である。
決して ではない。

いちばん南へ! 〜鹿児島県 佐多町〜


桜島1周も終え、明日は 『佐多岬』 で 「日の出」 を拝むことから始まる予定だ。
空を見上げると、雲で覆われている。というか、さっきから雨がぱらついている。

天気予報を聞く。

『天気は今夜から大雨でしょう。』



「日の出ダメじゃん!」



予定を 「日の入り」 に変更するのであった。
あわてて、南へ!

しかし、宮崎県日南市から交通マナーは法廷速度徹底が維持されている。
宮崎県と鹿児島県の違いは、対向車線にはみ出て追い抜きをかける県外ナンバーの車でもあろうものなら、同じくスピードを上げて追い越しを許さない徹底振りである。
後ろで、その同じ光景ばかり見ていると笑えるものである。

海ばかりでなく、たまには山を見上げてみると、ど肝を抜かれた。

「どへっ!」

山の頂から超巨大プロペラがたくさん立ち並んで回転しているのだ。

「風力発電の風車だ!」
ずっと自然に浸っていたため、この光景は超カルチャーショックであった。
のんびり運転に損は無い。

「そっちにはどうやって行くの〜っ!!」

いちばん南はお早めに 〜鹿児島県 佐多町 『佐多岬』〜


本土最南端 『佐多岬』 も間近である。
と、ゲートが見えてきた。どうやら有料道路を通らなければ岬には行けないようだ。
料金表に「通行料1000円」 と書いてあるのはともかく、「閉門 夏季 18:00、冬季 17:00」とあるのがなんとなく気になる。
「うーん、現在、午後4時50分か。」

細かいことは気にせずに 『佐多岬ロードパーク』 なる有料道路を突き進む。
「あのゲートのおばちゃんは、6時になったら ゲートを閉めて帰っちゃうのかな?」

「ま、どうでもいいけど。」

後先を考えない、おそるべき性格である。

どうやら、『佐多岬』 入り口のパーキングに着いたようだ。
時間が遅いのか、車は3台しか止まっていない。
正面にトンネルが見え、その入り口に料金所が見えた。

「げっ! 戸締りしてるぞ!」

あわてて近寄ると、門番のおばちゃんから 「入場料100円です。」 と言われた。

「えっ? 入ってもいいんですか?」
「はい。どうぞ。」

しかし、このおばちゃん、絶対に戸締りを続行して帰る気だ。
「ま、どうでもいいけど。」

『佐多岬』 入り口のトンネルは長い。遠くに見える出口の光以外に灯りはトンネル中央の電球1つ。

「ここを歩いていくのかよっ!」

「前が見えない。」

「ズボッ!」

水溜りに足を入れた音である。

「うぇ〜ん!」

トンネルを出て、さらにびっくり。
岬の灯台がはるかかなたに見える。ここからでは灯台の大きさは親指程度だ。

「あ、あそこまで、歩くのかよっ!」

まさに途中の道とは登山コースの道である。
外灯のような設備は見当たらない。日が沈んだら、それは「死」を意味する。

途中、3グループとすれ違う。
パーキングに止めてあった3台の車を思い出す。




「俺ひとりだ!」




一目散に灯台を目指す。
途中に海を一望できる小さな展望台がある。とんでもない絶景である。
しかし、今のムードでは「ここから飛び降りたらすぐに楽になれます」と呼びかけているような場所である。
さらに、廃きょと化した食堂を横切る。まさにオカルトである。

「ここが、あこがれの最南端か・・・」

あこがれの最南端とは、ハイビスカスが咲き乱れ、サンゴ礁で熱帯魚がたわむれる時間のとまった世界である。
現況は私の生涯の時間がとまりそうな世界である。

なんとか展望所の施設に到着したようだ。

「あれ? 灯台までは行けないのかな・・・?」

施設の扉を開けてみる。鍵はかかっていない。
奥の喫茶コーナーで店のおばちゃんが後片付けをしていた。それは「生」を意味する。



「俺は助かった!」



生き返った私は展望所最上階へとスキップ・ステップで階段を駆け上がる。
「おばちゃん、まだ帰らないでね〜」

ガラス張りの展望台から360度のパノラマが拝める。
窓ガラスを開けてみると、台風並みの風が舞い込んできて吹き飛んだ。
真下を覗くと、まさに足がすくむほどの高さであるが、現在、「生」モードであり、恐怖を感じない。

窓から身を乗り出して、あこがれの最南端の海を拝む。
あこがれの最南端の海とは、宇宙のように果てがなく、さえぎるものが全くない大海原のパノラマ世界である。

「おっ! 前方に種子島が見える。」

あこがれの大海原は、簡単に種子島にさえぎられ、打ち砕かれるのであった。

2泊目は桜島 〜鹿児島県 垂水市・鹿児島市〜


ここはまだまだ、『佐多岬』 の展望所である。
今回の九州1周の最大目的地がココだから長居しているのである。
「日の入り」も雲が厚くて拝むのは無理のようだ。

なにやら展望所1階がさわがしい。
どうやらライダー達が私の後を追うように到着したらしい。非常に心強い。
窓を再び見ると、若いお姉ちゃん2名が展望所から灯台のほうへ向かって降りていっている。

「おっ! まだ先に行けるのか!」

しかし、今の時間からこの先を進んで行くのは絶対に危険行為である。

「彼女達はまだ若いから、この先、きっと頼もしく生きていくに違いないさ・・・」

また一人ぼっちになる前に 『佐多岬』 を後にすることにした。
帰り道、一目散に突き進む血相を変えたカップルとすれ違った。
ついさっきまで、私もこんな血相でここを突き進んでいたに違いない。

「そんなにあわてなくても、まだライダーさん達がゆっくりしてますよ・・って、もう、あんなところまで行ってるし・・・」

トンネルを越えると戸締りを終えた受付のおばちゃんが迎えの車を待っている様子だ。
猛スピードで突っ込んできた車からスーツ姿の人が降りてきておばちゃんと交渉している。
どうやら入場を断られたようだ。
車の中で様子を見ていると、スーツ姿の人は今日の入場はあきらめて、このパーキングで1泊するようだ。

本日の宿泊地を決めていない私もココで過ごそうかと思った。

「ん?風呂に入っていない・・・晩飯も食っていない。」

「この辺って何も無いぞ!」

仕方なく、『佐多岬』 を後にすることにした。

有料道路のゲートは、出口は開いていて、入り口は閉まっている。
ゲートのおばちゃんは、すでに帰ってしまったようだ。
正面から車が来た。
「あらら、残念でした・・・、あ。」

車は出口から堂々と入場。
「・・・なるほど。」

桜島とつながる町、垂水市(たるみずし)に温泉を発見。
1時間ほど温泉に沈んで本日の旅の疲れを取り除いた。

「明日はこの鹿児島湾の向こう側にいるんだろなぁ・・ブクブクブク・・。」←※注(温泉で溺れている音である。決して鹿児島湾で溺れているわけではない。)

ふたたび、『桜島』。
すでに外は真っ暗である。パーキングなのか避難所なのかよくわからないが、そこに車を止める。

「噴火しないでね〜 ZZzz・・・」

「ポタ、ポタ、ポタ、ポタ・・・!」

天気予報どおりに大雨がやってきた。

「うるせぇんだよ! このトタン屋根車(ぐるま)〜っ!」

デジャビュの世界へ 〜鹿児島県 姶良町〜


2日目の朝。車は薩摩半島を目指し、北上を開始。
垂水市から福山町にかけては、沿岸を国道220号線が通っている。海沿いがゆったりとした大きな道であれば、海沿い旅行にはうれしい限りだ。
そこから見える鹿児島湾は何かの養殖の囲いで埋め尽くされていて、人間に支配されている。
「眺めはいいんだけど・・・」

「眺めも、潮の香りもなんとなく瀬戸内海っぽい。」と根拠は無いがポツリとつぶやく。まだ、寝ぼけているので本当に意味はない。

気がつけば、道も国道10号線という、地元の大分県では中枢となる道の名前へと変わっていた。
そして、薩摩半島へ突入。

姶良(あいら)町を走っていて、デジャビュが襲った!

デジャビュとは 「以前みたことがある」と感じる現象だ!
しかし、その程度ではない。なぜか毎日のように走っている道の感覚だ。

地元大分県の話になるが、大分県の別府市と大分市を結ぶ道、俗に言う 『別大道路(べつだいどうろ)』 という海沿いを通る道がある。
それと、この姶良町の海沿いの風景がそっくりなのである。
見た目がそっくりなだけでもびっくりだが、道路も同じ 『国道10号線』 であり、隣に並ぶ線路も同じ 『日豊本線』。
せっかくの旅の途中で大分県に連れ戻された感覚だ。
「そして、この交通マナーの悪さも同じ・・・。」

「ありゃ、大隈半島と薩摩半島はえらい違いだ。」

薩摩半島は猛スピードな地域である。
「おらおら〜っ!」

デジャビュのおかげで、すっかり、私の交通マナーまでも元に戻ってしまったのであった。

よく見る桜島の風景へ 〜鹿児島県 鹿児島市〜


車は鹿児島港へ到着。とにかく、海沿いを走る。
鹿児島湾の向こうには、昨日寝泊りした桜島が見える。桜島といえば、まず脳裏にイメージとして浮かぶ『桜島』 の風景スポットがここにある。
定番の 『桜島』 風景のイメージと違うのは、噴煙がない、そして悪天候なところだ。

ダメダメである。

「とにかく、山というのは近くに行くのではなく、遠くから眺めるものだな。」

まったく、楽を優先する意見である。

巨大ウナギとスキンシップ 〜鹿児島県 指宿市 『池田湖』〜


鹿児島市を下ると温泉で有名な指宿市(いぶすきし)に到着。
指宿市は 『指宿温泉』 以外にも、『怪獣イッシー』 が生息しているらしい 『池田湖』が有名である。
まだまだ朝も早いので、ひょっとしたらイッシーが頭でも出しているかもしれないと『池田湖』 に寄ってみる。
期待に反して池田湖は観光の人たちで大賑わいだ。

「こりゃ、イッシーも住みにくいだろうな。」

あちこちに 『大うなぎ』 と書いた看板が立っている。
近寄ってみると、こりゃまたびっくり。2mはある大うなぎがあちこちの水槽に入っている。

「でか!」

つるつるの大蛇といったところだろうか。

巨大うなぎが水槽の水面に頭を浮かべて 「ポケ〜」 としている。
管理しているおっちゃんがよそ見をしている。
巨大うなぎの頭をつついてみる。

「つん!」

「プク、プク、プク・・・」

「沈んだ・・・。」

南国の富士山 〜鹿児島県 開聞町 『開聞岳』〜


『池田湖』 を南下して再び海沿いへ戻ろうとすると、なんとも立派な山に遭遇する。
率直に言って申し訳ないが 『桜島』 より立派である。

『開聞岳(かいもんだけ)』 という別名 『薩摩富士』 とも呼ばれている円錐形火山だ。
とにかく高い。天気が悪く、頂上は雲の壁を突き破り、天とつながっている。
いままで見てきた山の中で一番気に入った。

開聞岳へ向かって道が伸びている。
「愛車ミラちゃん、あれ上れるか?」

『ゼッタイ、ノボレマセン』

再び最南端へ 〜鹿児島県 山川町 『長崎鼻』〜


車は薩摩半島の最南端 『長崎鼻』 へ到着した。
『佐多岬』 のような崖上とは違って、こちらは磯辺である。

足場の悪い磯をとにかく、「先っちょ」 まで向かって歩く。
潮溜まりを覗くと、なんと、珊瑚が生息している。

「おお!これぞ、南国!」

途中で磯は分断され、20cmほどの幅しかない平均台のようなコンクリート壁の残骸の上を渡らないと先へ進めない。

「これは向こう岸までの通路として作られたのであろうか?」

とにかく、向こうの磯まで5m以上はある。水面までの高さも1mはある。ここから先は誰も行こうとしない。
落ちたら大勢のギャラリーの視線を独り占めできるであろう。

「簡単さ、行っちゃえ!」

思ったより、足場が悪い。
「およっ!」 ヨロ、ヨロ・・
『ザワザワ』 ← (ギャラリーの歓声 !?)

なぜか、中央付近で突風が横から襲う。
「はうっ!」 ヨロ、ヨロ・・・
『ザワザワザワ』

なんとか渡りきったが、背中にものすごい視線を感じるので振り向けずに先へ進む。

「ふふふ、ここからの領域は私だけのものだ。」

別に意味は無い。

「先っちょ」 へ到着。
松竹映画のオープニング場面みたいな風景だ。
海面から突起した磯に波が打ち上がっている。

後ろを振り向いてみてば、ひとり完全に孤立している。

「思えば遠くへ来たもんだ・・・。」

見上げると、なぜか私を中心に、上空で海上保安庁かどこかのヘリコプターが旋回している。

「ワタシ、ミッコウシャデワ、アリマセ〜ン」

薩摩半島は一周です 〜鹿児島県 坊津町〜


海沿い旅行の第一の理由は、14年型落ちの愛車ミラ号の健康を考えて、平坦な道を優先することに他ならない。
地図を見れば薩摩半島は海沿いに走っていけそうだ。
「 『東シナ海』 の満喫旅スタートだ!」

車は颯爽(さっそう)と山道を上る。
「え?」

海沿いだからといって平坦とは限らない。崖道であってもおかしくない。
「うう、浅はかな考えだった・・。」

ミラ号の健康を気づかっているのも束の間、崖から見下ろす東シナ海は絶景である。
「す、すばらしい!」

薩摩半島の山頂にも風力発電の巨大プロペラ群が立ち並んでいる。
「す、すばらしい!」

最近、ミラ号は無理をさせて坂道を上り続けると、時速30kmしか出なくなる。

「がんばれミラ号!お前はもうすぐ 『新車』 に生まれ変わるのだ!」

走行メーターが1周してゼロに戻るだけのことだ。

熊本のシッポ 〜熊本県 天草松島〜


最悪の悪天候だ。朝を迎えても雨は止まなかった。
熊本県の海沿いは北上すればよいわけではない。
しっぽのような半島が長崎県までとどいてしまいそうに横に伸びている。
ここを1周するだけで半日つぶれそうである。

しかし、熊本の海に来て無視できない場所がココにある。『天草松島』 である。
『天草松島』 は、宮城の松島、長崎の九十九島と並ぶ日本三大松島の一つで誰もが絶賛する景勝地だ。

『天草パールライン』 と呼ばれる島々を5つの橋でつなげた道は、悪天候の中を走れば涙が出てくる。

「霧で景色が見えない!」

リアス式海岸で入り江となった海岸は白い砂浜で、大雨というのにもかかわらず青い海を維持している。
これで晴れていれば、まさにハワイアンである。

「雨のばかぁ〜!」

カニ食べ行こう! 〜佐賀県 太良町 ・ 長崎県 国見町〜


佐賀県太良(たら)町の有明海はワタリガニが特産のようだ。
道路のあちこちに 『竹崎カニ』 の看板が出ている。

「焼きカニ・・。 うーん、うまそうだ。」

現在、午前11時。
「もうちょっと走って、カニ食べよう!」

「ああ〜!?  看板がなくなった!」

佐賀県太良町を過ぎてしまったようだ。

島原湾沿いに長崎県国見町を走っていると、『多比良ガネ』 というワタリガニの看板が、先ほどの 『竹崎カニ』 と同じように道路でにぎわっている。
昼ともなると、客でごった返している。駐車場もいっぱいで車が道路にあふれ出している。

「次・・・。わ、ここもいっぱいだ!」

「次・・・。」

「ああ〜! 看板がなくなった!」

地図を見ると島原市にもカニのマークがある。
「今後こそ、カニ食うぞ!」

長崎県島原市は観光地というより、普通の大きな町だ。車を止める場所が無い。ごみごみしている。

「それより、カニ食う店がねぇ!」

雲仙でエンコ寸前 〜長崎県 島原半島〜


島原半島の中央には、『雲仙・普賢岳』 がそびえ立っている。

「カニ〜!」

島原市の国道57号線は海沿いの57号線、山へ向かう57号線へと分岐する。
どうやら、カニで頭がいっぱいだったので道を間違えたらしい。

「あ、カニから遠ざかってる・・・。」

雲仙の峠道は険しい。
ミラ号もフルアクセルで時速30kmが限界だ。

「やっぱ、上るのはまずかったかな・・・。」

山道ともなると、天気もさらに悪化する。どしゃぶりでワイパーも意味が無い。
霧もひどくなってきた。1m先が見えない。

もはや、道路と崖の境が分からない。
車の時速は10kmと出ていない。

「あれ?」

別に徐行しているのではない。フルアクセルなのだ。
平坦な道になってもフルアクセルで時速10kmしかでない。

「げっ! ミラ号が虫の息だ!」

路肩に車を止めて、一か八か、エンジンを切る。

「この辺にカニの店は絶対無いな・・・。」

そういう状況では無いはずだ。

小雨になり、視界も5m先まで見えるようになってきた。
車から降りてみる。
タイヤの半分が道路にかかり、半分は崖下を覗いている。

「あ、落ちそう・・。」

おそらく、足もすくむほどの崖だろうが、霧というよりも雲の上にいる状態だ。崖に落ちても雲の上を延々と走っていけそうな世界である。

「ミラ号、見なよ。三途の川が見えるよ。」

長崎は今日も雨だった 〜長崎県 長崎市〜


無事、島原半島を抜けて、いつの間にか長崎市街地へ到着する。
ミラ号も平地であれば機嫌が良い。
しかし、天気はご機嫌ナナメである。
「雨の 『オランダ坂』 も良いのでは。」

長崎市内は路上駐車できるような場所ではない。
ゴールデンウィーク真っ只中の市街地は祭りのようににぎやかだ。
駐車場なんてあっても満車ばかりだ。

『オランダ坂』 周辺を駐車場求めて何周もする。

「もう、我慢ならん!」

通行人で大混雑の 『オランダ坂』 を車で強行突破する。
「おらおら〜!」

あっという間に、『オランダ坂』 終了である。
「・・・・・。うーん、何だったんだ。」

通行人に注意しながら走っただけで、風景なんて全く見ていなかったのだった。

『平和公園』、大雨、および、満車。

『グラバー園』、知らぬ間に通過してた。

長崎市街観光、終了。

長崎は今夜は雷雨だった 〜長崎県 西海町〜


『ハウステンボス』 に近い長崎県西海町。
『七ツ釜鍾乳洞』 という標識を発見。
雨の中、到着したが時間が遅く、閉まっていた。
山口県の鍾乳洞旅と同じような場面だ。鍾乳洞とは相性が悪いようだ。

鍾乳洞近くの大型旅館内 『化石の湯』 にて本日の疲れをほぐす事にした。
当然、お泊りではない。入浴だけである。

晩飯を求めて西海町の「お町」へ下る。
定食屋とか見当たらない。
夜8時というのに町は暗く静まり返っている。
明かりのついた商店を発見。

「こんばんわ〜」

しばらくして、おばあちゃんが出てきた。
「はい、いっらっしゃいませ」

店内を物色(ぶっしょく) する。

「あの・・、何か晩飯になるようなものは・・」
「ないよ。」
返事が即答。

「こ、これとこれ、くださいな・・。」

ビールとスナック菓子を買う。
おばあちゃんも申し訳なさそうに見送ってくれた。

県道43号線の中央付近に道の駅を発見。

「今日はここで寝るか・・。」

プシュ! ←(ビールを開ける音)

「あ〜っ! 目の前にコンビニあるし!」

ポリポリッ! ←(じゃがりこ の音)

「明日の朝飯は安心だ、寝よ。」

ぴかっ!
閃光が走る。
ゴロゴロ! ドッカーン!

「どうして、睡眠を邪魔するんだ!」

私の旅路と天気は非常に相性が悪い。

ボ〜タ、ボタ、ボタ・・・!
「ミラ号、お前も天気の仲間か!」

ゴロゴロ!ドッカ〜ン! ボタボタボタ・・! ZZZzzzz・・・。
意地でも眠れるものだった。

これぞ、長崎! 〜長崎県 平戸市〜


『七ツ釜鍾乳洞』 の営業は8時半から。
ここで2時間半も待つわけには行かないので断念。

『ハウステンボス』 は巨大テーマパークだけに立ち寄ることはやめ。
中に入れば、それだけで1日が終わるであろうし、ひとりで入ってもしょうがない。

『九十九島』 とは208の島々が密接する観光スポット。
「もや」でさっぱり。

平戸島へつなぐ橋 『平戸大橋』 までやってきた。
「ココ渡らないと、長崎が終わっちゃうな。」

通行料100円を払い、橋に入った途端に雨がピタッと止まった。

「Welkom, ヒラド〜」 ←(オランダ語のつもり)

と天から聞こえたような、奇跡的な雨の止(や)み方だ。

平戸市の観光パンフレットを手に入れる。
「お〜、観光名所だらけだ。」

『平戸城』 に車を止めて、久々の歩き旅の開始だ!

長崎市街地とは別世界のゆったりとした町だ。非常にすがすがしい。
『オランダ橋(幸橋)』 や 『平戸和蘭商館跡』 等の1600年前半の跡地を数多く残し、その風景を壊さないような観光の街づくりが調和してみごとな長崎イメージの世界を完成させている。
「有料のテーマパークよりも完成度が高いぞ!」

『聖フランシスコ・ザビエル記念聖堂』 前。
「東京ディズニーランドのお城かと思った・・・。」

「残りの生涯(おいおい←自分つっこみ)は、ここで観光客を相手に土産品でも売って暮らして生きたい。」
と思うほどイイ町だったので、半日もブラブラしていたのであった。
「さて、次の町へ出発!」

「あっ! 平戸城行くの忘れた!」

帰りに寄ろうと思っていて、結局、駐車しただけで終わってしまったのだった。

そして、平戸で一番印象に残ったのが、『オランダ埠頭』 横で猛スピードで回転する『スルメイカ』 であった。

解説:『猛スピードで回転するスルメイカ』
靴下とかの洗濯物を干す円形の洗濯バサミがいっぱい付いたやつみたいなのが、さらに数段あり、そこにスルメがいっぱい吊らされて猛スピードで回転している装置。スルメを網の上に天日干ししている「のどかな」風景が随所にある中、ココだけスルメが「激しい」行動をとっていた。水気をとっているのだろうか・・・?

有名な河童様でした 〜佐賀県 伊万里市〜


長崎県も終わり、再び佐賀県へ突入。伊万里(いまり)市へやってきた。

伊万里と聞けば 『伊万里焼』 を頭に浮かべるであろうが、「通」 な人は、約300年前からあるという老舗 『かっぱ酒蔵』 さんを思い浮かべる。
その 『かっぱ酒蔵』 さんの蔵(くら)の1つに テレビで何度も取材されている 『かっぱのミイラ』 なるものが展示されているらしい。
「怖いもの見たさ」 で寄ってみる。

『かっぱ酒蔵』 さんの駐車場らしきところを発見。車をとめる。
「うーむ、ココに一般の人が止めていいのだろうか・・・」

しかし、誰もいない。
『かっぱ酒蔵』 さんの敷地に入り込む。
誰もいない・・。

「別に不法侵入ではありませんよ〜。」

敷地内を歩いていると、一般道路に出た。
道路正面に「かっぱ展示場」なる看板と建物を発見。

「あ、不法侵入だった・・・。」

展示場なる建物の前に来る。
「うーん、誰もいない。勝手に入ってもいいのかな・・・?」

ピンポ〜ン!

建物内に入るなり、センサーでチャイムが鳴る。
「あわわっ! 怪しいものではアリマセン〜!」

店主さんらしい方が、別の建物からやってきた。
「あの、見学に来たのですが・・・」
「はい、ご自由にどうぞ。」

展示館には、大小さまざまな河童の置物等がコレクションされていて展示されている。
そのほか、店主さんの趣味なのか、古銭や海外のコインなども展示されている。
結構、見るほどある。
一番奥に 『ミイラの河童様』 が展示されている。
「あっ! テレビで何度も見たことある!」
「おお〜! こいつだったのかぁ〜!」

しかし、これ以上に館内を見学していることはできない。
私が帰るまで、店主さんは仕事ができずにじっと立って待っているのである。
このまま、手ぶらで帰るのは申し訳ないので、お酒を購入。

もう1つ、申し訳ない気分になる。
すでに車のトランクには、1升ビンのお酒が3本入っている。これで4本目だ。

「ミラ号、パンクしないで、かんばって行こ〜っ!」

松茸はありません 〜佐賀県 唐津市・浜玉町〜


『伊万里焼』 の伊万里市を北上すると、『唐津焼』 の唐津市へやってくる。
佐賀県は焼き物の町なのだ?

唐津市から東松浦郡浜玉町にかけて、日本三大松原のひとつ、『虹の松原』 がある。
ほかの松原とは、『三保の松原』,『天橋立』である。

簡単に言ってしまえば、防風・防砂防潮林であるが、松で囲まれた全長4.5kmの道は樹海である。
車を止めて、海岸方面に歩いてみる。
植林されたのであろう、松は規則正しい間隔で同じ大きさで生い茂っている。
この松の樹海すべてに松茸が生えていれば、億万長者とは言わず、国家を支えることができるであろう。

「やばいな、ちゃんと車まで帰れるかな・・・」

とにかく目印になるようなものはない。どこまで歩いても同じ風景だ。クネクネ歩いていたら無事に車に戻ることは不可能である。

海辺に着いたかと思えば、唖然。
松林と砂浜の境界に沿って延々と木の塀で仕切られている。

「げっ!、砂浜に入っちゃダメなのかよ!」

『日本三大松原』 だけあって、砂浜も 『白砂青松100選』 に入っているのは当然だ。
その砂浜は塀の向こうである。

「俺が入ったら、砂浜が汚れるというのかっ!」

塀の隙間から、わずかに砂浜が見える。遠くに砂浜を歩いている人が見える。

「お前は選ばれしき者か!」

あまり塀に沿って歩いていると車に戻れなくなりそうなので、泣く泣く帰還したのであった。

ゴールの大門はどこだ? 〜福岡県 志摩町 【芥屋の大門】〜


九州1周もゴール間近。福岡県に突入した。
福岡県も大分県のお隣のために 「旅」 という感覚にならない。

佐賀県浜玉町の 『虹の松原』 を抜け、唐津湾を北上すると 『芥屋大門(けやのおおと)』 なる観光名称がある。
ココが旅の最終地になりそうだ。

ようやく雨も止み、なんとか明るい雲空。
県道54号線はおもいきり見通しの良い一直線の道で、しかも貸しきり状態だ。
あっという間に 『芥屋大門』 付近にたどり着く。

「うーんと・・、地図によるとこの辺なんだけど・・・。」

それらしい駐車場に車を止めて海岸へ・・・。
「おお!玄界灘が一望ですな・・。」

「ところで、『芥屋大門』 ってなんだろ・・・。」

少し後戻って、「展望台こっち」 という看板の方角を見る。
となりのトトロが住んでそうな山道を上っていくようだ。
登山道は雨でグチュグチュだ。

ここが旅の最終地になりそうなので、あきらめる訳にはいかない。
根性で頂上の展望台に上がる。
「おお!玄界灘が一望ですな・・。」

「ところで、『芥屋大門』ってなんだろ・・・。」

車に乗り込んで、海沿いを手がかりを求め、何度も探索する。
「芥屋大門→」 なる看板を発見。

「ここか!」

車から降りてみると、どう見ても船乗り場だ。
『芥屋大門』 解説看板をながめる。

======   ココから引用文↓   =======

「日本三大玄武洞の中でも最大のもので、六角形や八角形の玄武岩が柱状節理(ちゅうじょうせつり)をなして、玄海灘の荒波にそそり立っています。 海蝕(かいしょく)によってできた洞窟(高さ64m、間口10m、奥行き90m)は、黒々と玄海灘に向かって口を開き神秘的な景観を呈しています。 波静かな4月〜11月迄は、芥屋漁港から遊覧船で約25分、・・・」

======  引用文ココまで↑   ======






「船に乗らんとダメなのかっ!」






「とにかく、次の出航時間は ?」

周辺に人の気配なし。入り口にクサリ。午後6時。








「閉まってる!」








車は国道3号線から国道10号線へと海沿いを忘れて大分県へ戻る。

それは旅の終了であった。

ミラ号は今回の旅で新車にはならなかったようだ。

おしまい。